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豊田高専同窓会のこと

名誉会長あいさつ

豊田高専校長に着任して

豊田工業高等専門学校 校長 阿波賀邦夫  

 このたび豊田工業高等専門学校の校長に着任いたしました阿波賀邦夫(あわが・くにお)と申します。この原稿は6月半ばに書いておりますが、いまなお毎日、学生や教職員と接する中で新鮮な驚きと感動を覚えています。

 私はこれまで名古屋大学にて、分子物性科学という分野を専門に研究と教育に従事してまいりました。高専教育に直接関わるのは今回が初めてではありますが、これまで多くの高専出身の大学院生や若手研究者と接する機会がありました。彼らはみな、確かな実験技術と自ら課題を見出す力、そして実践的な思考力を兼ね備えており、私はいつも深い敬意と信頼を抱いてきました。今回、そのような人材を育てる場である豊田高専に赴任できたことを、心より光栄に感じております。

 実際に本校で過ごした2ヶ月間、学生たちの真剣なまなざしと、自主性あふれる活動に毎日のように感銘を受けています。また、それを支える教職員の皆さんの熱意と献身にも、改めて高専教育の底力を感じています。教員と学生が、互いに信頼を寄せながら真摯に向き合う姿に、教育現場としての理想の形があるように思います。そうした中で、つい先日には非常に嬉しいニュースが飛び込んできました。本校のチームが、DCON(ディープラーニングとものづくりを融合させた全国高専コンテスト)において最優秀賞を受賞したのです。豊田高専チームは、腕に装着することで介護中の会話から記録に必要な情報をマイクを用いて抽出し、自動で記録を作成・共有ができるウェアラブル端末を開発し、企業評価額7億円と高く評価されました。既存の技術を利用しながらも、地元の介護施設からヒントを得る行動力と地頭の良さ、そしてチームワークが生み出した成果であり、豊田高専の教育研究力を全国に示すことができました。

 高専教育は、講義や実験実習、卒業研究などの「本課活動」に加え、ロボコンやDCON、各種クラブ活動、国際交流などの「課外活動」も重要な柱となっています。特に近年では、課外活動の比重が年々高まっており、学生たちの人間的成長や社会的スキルの涵養にも大きく寄与しています。こうした活動は、単なる「おまけ」ではなく、むしろ高専教育の柔軟性と多様性を象徴するものといえるでしょう。しかし、こうした課外活動の推進には課題もあります。国から支給される学校予算は長らく横ばいの状態が続いており、学生の自主的活動を充実させるには、学外からの資金的支援がますます不可欠となっています。本校では教育後援会や保護者の方々、そして地元企業や自治体からのご協力をいただいておりますが、今後は今後は同窓会や卒業生の皆様からの有形無形のご支援も大きな力になります。

 かつて豊田高専で青春を過ごし、学び、仲間とともに歩んでこられた皆様に、心よりお願い申し上げます。ぜひ後輩たちの挑戦を応援し、彼らがさらなる高みを目指せるよう、温かいご支援を賜れれば幸いです。卒業生の皆様の歩みこそが、今の学生たちの目指す未来そのものであり、その背中が、彼らの希望となります。

 今後とも、豊田高専の教育活動にご理解とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。