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豊田高専同窓会のこと

名誉会長あいさつ

第3のキャリアパス~スタートアップ教育環境整備事業始まる

豊田工業高等専門学校 校長 山田 陽滋  

 スタートアップの励行は、イノベーション促進とその社会的受容性を高める上で重要な政策課題であるとして、2022年6月から政策支援が始まりました。これを受けて、『日本の経済成長を促し、社会課題解決に貢献するため、「高い技術力」「社会貢献へのモチベーション」「自由な発想力」および「主体的にチャレンジする力」をもっている高専生は、起業に適した人材であるといえる。』として、国立高専機構本部も2023年4月のキックオフで全国の高専を対象として「スタートアップ教育環境整備事業」を通して、当該教育を推進してきています。これを受けて、本校でも2023年4月からスタートアップ教育を始めました。

 豊田高専のスタートアップ教育では、アントレプレナーシップもさることながら、社会課題に挑むときに学生諸君が依拠すべき理念が必要と考えて、「SDGsの考え方に基づき社会課題を解決する」ことを目指します。そして、それぞれの分野で有用なDX基礎技術を習得した豊田高専の学生諸君が、社会の諸課題に主体的に取組み解決に導けるような、以下に示す3ステップからなる起業マインド高揚プログラムの構築を目指し、今年度、できるところからスタートさせています。すなわち、【STEP1】では、アントレプレナーシップ、金融に関する講演を聞き、協創実習を行います。【STEP2】では、彼らが社会課題の解決の際に、彼ら独自の技術として持っていてもらいたい、アドバンストな技術として機械工学科、電気・電子工学科、情報工学科の学生諸君を中心とするSmart Mechatronics(知能メカトロニクス)分野ならびに建築学科、環境都市工学科の学生諸君のためのDigital Fabrication(ディジタルデザイン加工)分野それぞれのサブ教育プログラムを整備してきています。さらに【STEP3】では、企業・自治体等の協力を得、彼らの助言も仰ぎながら、社会課題解決の実体験を学生諸君に積んでもらうようにします。

 ところで、スタートアップ教育は、いまや一部ながら小学校から始められているという実態をご存知でしょうか。高校では、スタートアップ教育が始まって10年が経過しようとしているところがあるぐらいです。これらの動向に鑑みると、本校の今年度のスタートアップ教育始動は時期的にはむしろ遅いぐらいといえます。それだけに、教職員や学生とよく議論しながら、ユニークで的を射た教育プログラムに成長させていきたいと考えています。例を挙げれば、課外活動時間帯を利用したスタートアップサークルの開設があります。現在のインキュベーションセミナー室は、やがて起業家工房と名を変え、外部から同窓生はもとより、起業家、自治体や企業の方々、金融業や投資家等の方々が自由に出入りできるような空間にしたいと考えています。

 この起業家工房においては、上記の外部有識者らに対して、学生が気軽にコンタクトをとったり、ディスカッション、あるいはコンペイベントのメンター役をかっていただく等、外部有識者との交流機会が多く生まれることを期待しています。また、本校の有志同窓生も本教育プログラムに参加できるようなリカレント・スタートアップ教育も可能としてその道を作りつつあります。同窓生の皆様の中には、すでに起業を果たしている方も少なからずおられると思います。ぜひ、「起業に適した人材としての高専生」がもつ大きな可能性を実現できるように、同窓生の皆様にもスタートアップ教育の導入にご賛同をいただき、高専の先輩としてそして人生の先輩として、多様な形でご支援いただければ大変幸いに思います。